受験生の親がやってはいけない5つのこと|「勉強しなさい」が逆効果な理由

はじめに|あなたの「善意」が、子どものやる気を奪っているかもしれません

「勉強しなさい」「もっと頑張りなさい」「友達はもう始めてるらしいよ」

——すべて、お子さんを思って言っている言葉のはずです。

しかし残念ながら、これらの言葉は科学的に見て「逆効果」であることが分かっています。

ベネッセ教育総合研究所の調査では、親から「勉強しなさい」と言われた子どもの学習時間は、言われていない子どもとほとんど変わらない——むしろ、言われた頻度が高いほど勉強に対する意欲が低いという結果が出ています。

この記事では、指導歴15年・数百人の受験生を見てきた経験をもとに、受験生の親が「良かれと思ってやってしまう」5つのNG行動と、その科学的な理由、そして代わりにできることをお伝えします。


NG①「勉強しなさい」と命令する

なぜ逆効果なのか?

心理学に「心理的リアクタンス」という概念があります。

これは、人間が「自由を奪われた」と感じたとき、その自由を取り戻そうと反発する心理作用のことです。1966年にアメリカの心理学者ジャック・ブレームが提唱し、教育心理学の分野で広く研究されています。

つまり、「勉強しなさい」と言われた瞬間、子どもの脳内では——

「勉強する」という自分の選択の自由が奪われた → その自由を取り戻すために「勉強しない」を選ぶ

——というメカニズムが働いてしまうのです。

さらに、思春期の子どもの脳は、感情を司る扁桃体が強く反応する一方、理性を司る前頭前野がまだ発達途中です。大人なら「まあ、言われてもしょうがないか」と受け流せる一言も、受験生の年齢では「攻撃された」と受け取ってしまうことが珍しくありません。

具体例:「今やろうと思ってたのに…」

高校2年生のAくんは、毎日少しずつ勉強する習慣が身につきかけていました。しかし、ある日の夕食後にスマホを触っていたタイミングで、お母さんから「いつまでスマホ見てるの?勉強しなさい!」と言われました。

Aくんは実は「この動画を見終わったら机に向かおう」と思っていたのですが、言われた瞬間、「もういいや」とやる気が消え、結局その日は勉強しませんでした。

翌日からも「どうせ言われるし」「やっても認めてもらえない」という感覚が芽生え、せっかく育ちかけていた学習習慣が崩れてしまいました。

代わりにできること

  • 「今日は何をやる予定?」と質問形で聞く(命令ではなく、本人に考えさせる)
  • 勉強の話題は食事中など自然な場面で軽く触れる程度にする
  • 行動を見てから声をかける。やっていたら「お、やってるね」と一言だけ

NG②「○○ちゃんはもっと勉強してるらしいよ」と他人と比較する

なぜ逆効果なのか?

他人との比較は、心理学でいう「外発的動機づけ」を強化し、「内発的動機づけ」を破壊します。

アメリカの心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論(Self-Determination Theory)」によれば、人間のやる気には3つの基本的な心理的欲求があります。

  1. 自律性(自分で決めたい)
  2. 有能感(自分にはできるという感覚)
  3. 関係性(人とつながっている感覚)

他人と比較されると、このうち「有能感」が真っ先に壊れます。「自分はダメなんだ」「どうせ敵わない」という気持ちが芽生え、挑戦する気力そのものが失われてしまうのです。

具体例:「比べないで」と泣いた生徒

高校3年生のBさんのお母さんは、ママ友との会話で「○○さんの娘さんは毎日10時間勉強しているらしい」と聞き、焦ってBさんにそのまま伝えました。

Bさんは自分なりに1日6時間の勉強を続けていましたが、その一言で「6時間じゃダメなのか。私の努力は意味がないのか」と感じ、翌日から机に向かうたびに不安に襲われるようになりました。

結局、1ヶ月後には勉強時間が3時間に減り、「もうどうでもいい」と投げやりになってしまいました。

代わりにできること

  • 比較するなら過去の本人と比較する(「先月より英語の点数上がったね」)
  • 他の子の話を聞いても、子どもには伝えない
  • 「あなたはあなたのペースでいい」という姿勢を言葉と態度の両方で示す

NG③ 成績や模試の結果に一喜一憂する

なぜ逆効果なのか?

親が結果に過剰に反応すると、子どもは「結果を出さなければ愛されない」という歪んだ認識を持つ危険があります。

これを心理学では「条件つきの肯定(Conditional Regard)」と呼びます。「良い点を取ったときだけ褒める」「悪い点を取ると不機嫌になる」——この繰り返しが、子どもにとって「自分の価値=テストの点数」という等式を作り上げてしまいます。

すると、テストの結果が悪かったときに自分自身を全否定してしまい、「どうせ自分はダメだ」という学習性無力感に陥る可能性があります。

具体例:模試の結果を見せなくなった生徒

Cくんのお父さんは、模試の結果が返ってくるたびに「偏差値いくつだった?」「判定は?」と聞くのが習慣でした。成績が良ければ上機嫌、悪ければため息をつく——それだけのことでしたが、Cくんにとっては毎回の模試が「親の評価を受ける裁判」のように感じていました。

ある時、E判定が出た模試の結果を隠し、「まだ返ってきてない」と嘘をつくようになりました。本来、E判定は「ここが弱い」という貴重な情報なのに、分析のチャンスが失われてしまったのです。

代わりにできること

  • 結果ではなくプロセスに注目する(「毎日コツコツやってたもんね」)
  • 模試の結果は子どもから話してくるまで待つ
  • 悪い結果だったとき、「次どうする?」という未来志向の会話をする
  • 「お疲れさま、大変だったね」とまず労う

NG④ 子どもの前で受験費用の愚痴を言う

なぜ逆効果なのか?

「塾代、月に○万円もかかるのよ」「受験料だけで何十万…」

親としては、独り言のつもりかもしれません。しかし、子どもはその言葉を「自分のせいで親に迷惑をかけている」と受け取ります。

受験生は、ただでさえ大きなプレッシャーを抱えています。そこに「お金の罪悪感」が加わると、以下のような悪循環に陥ります。

  1. 「こんなにお金をかけてもらっているのに、結果が出なかったらどうしよう」
  2. 「失敗が許されない」というプレッシャーで思考が硬直する
  3. 不安に押しつぶされ、逃避行動(スマホ・ゲーム・睡眠)に走る
  4. 親はさらに「お金を払っているのに何をしているの」と怒る

具体例:「申し訳ない」が口癖になった生徒

Dさんは、お母さんが電話で親戚に「受験って本当にお金がかかって大変」と話しているのを偶然聞いてしまいました。

それ以来、「すみません」「申し訳ない」が口癖になり、参考書を買ってほしいと言い出せなくなりました。本当は苦手科目の問題集が必要だったのに、「これ以上お金を使わせられない」と我慢した結果、その科目の成績はどんどん下がっていきました。

代わりにできること

  • 受験費用の話は配偶者間や親族間だけでする
  • 子どもの前では「必要なものは遠慮なく言ってね」と伝える
  • もし家計の事情を伝える必要がある場合は、冷静に、事実だけを伝える(感情をぶつけない)

NG⑤ 進路を親が決める・親の価値観を押し付ける

なぜ逆効果なのか?

「とりあえず国公立」「あのお祖父ちゃんの出身校」「文系は就職がないから理系にしなさい」——

こうした発言は、先ほどの自己決定理論における「自律性」を真正面から否定する行為です。

受験は、人生で初めて「自分の未来を自分で選ぶ」経験になり得る大切な場面です。ここで親が選択肢を奪ってしまうと、子どもは「自分で決めた」という実感がないまま受験に臨むことになります。

すると何が起きるか?

  • 入試勉強に本気で取り組めない(「自分が決めたわけじゃないし」)
  • 合格しても大学に行く意味を見いだせない
  • 不合格だったとき「親のせいだ」と恨みに変わる

具体例:「お父さんの理想」を背負った受験生

Eくんのお父さんは、自身が大学受験で悔しい思いをした経験から、「息子には絶対に旧帝大に行ってほしい」と強く望んでいました。Eくん本人は地方の私大で学びたい分野がありましたが、それを言い出せず、志望校をお父さんの希望通りに変更。

しかし、心の底では納得していないため、勉強に身が入りません。「なぜやる気が出ないのか分からない」と本人も悩んでいましたが、原因は明白でした。「自分で決めていないから」です。

代わりにできること

  • 「どうしてその大学に行きたいの?」と聞く側に回る
  • 親の意見は「参考程度に」伝え、最終決定権は子どもに委ねる
  • 子どもの選択を批判せず受け止める。たとえ自分の理想と違っても
  • 情報提供(学費・就職率など)は事実ベースで行い、判断は本人に任せる

では、親は何をすればいいのか?

5つのNGを見て、「じゃあ何も言えないの?」「放っておけばいいの?」と思われたかもしれません。

答えはNoです。 無関心もまた、子どもを傷つけます。

大切なのは、「介入」ではなく「支援」、「指示」ではなく「伴走」です。

親ができる3つのこと

① 環境を整える

勉強の内容には口を出さず、集中できる環境を整えることに徹しましょう。静かな部屋、適切な温度、栄養バランスの取れた食事、規則正しい睡眠——これらは親にしかできない、最も価値のあるサポートです。

② 感情の「受け皿」になる

「今日は全然ダメだった」「もう無理かも」——受験生は日々、不安と戦っています。そんなとき、「大丈夫」「頑張れ」ではなく、「そうか、大変だったね」と共感する一言が、子どもの心を支えます。

アドバイスは求められたときだけ。まずは「聴く」に徹することが重要です。

③ 勉強のことは「第三の大人」に任せる

親子関係は近すぎるがゆえに、勉強の話になると感情的になりやすいものです。

「勉強しなさい」と言いたくなる気持ち、模試の結果が気になる気持ち——それ自体は自然なことです。しかし、それをそのまま子どもにぶつけてしまうと、関係が壊れる。

だからこそ、「勉強の管理」は親ではない第三者に任せるべきなのです。


「第三の大人」という選択肢

星野村フォレストアカデミーでは、「第三の大人」として受験生を支えるという考え方を大切にしています。

親でも学校の先生でもない、「勉強の話だけをフラットにできる大人」が毎日そばにいることで——

  • 子どもは親に言えない弱音を吐き出せる
  • 親は「勉強しなさい」と言わなくて済む
  • 家庭が「監視の場」ではなく「安心の場」に戻る

代表の山口浩久は、慶應義塾大学卒・指導歴15年のベテランであり、自身も子を持つ父親です。親の気持ちも、子どもの気持ちも、両方分かるからこそ、その間に立って両者の橋渡しができます。

毎日のLINE報告で学習習慣を管理し、保護者様には週次レポートで成長プロセスをお伝えします。「うちの子、最近どうですか?」という不安を抱える必要はもうありません。


まとめ

やってはいけないこと心理学的な理由代わりにできること
① 「勉強しなさい」と命令心理的リアクタンスで反発する「今日は何をやる予定?」と質問形で
② 他人と比較する有能感が壊れ、自己否定に過去の本人と比較する
③ 成績に一喜一憂条件つきの愛情と感じるプロセスを認め、労う
④ 受験費用の愚痴罪悪感でプレッシャーが増す金銭の話は子どもの前でしない
⑤ 進路を親が決める自律性が奪われ、やる気が出ない情報提供に徹し、決定権は本人に

受験は、親子関係の「試験」でもあります。

「勉強しなさい」を封印する代わりに、「あなたを信じている」という姿勢を示すこと。それが、受験を通じて親子の絆をさらに強くする唯一の方法です。


「うちの子の勉強、もう口出ししたくない。でも何もしないのは不安…」

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